第18章

彼女は何かを思い出したかのように、目を見開き、ドアの外を指さして言った。「奈々未、見て!あの人、丹羽家の長男じゃない?」

島宮奈々未は安島若菜が指す方向を見た。入口に質素な服装でマスクをした男性が立っていた。

それは先ほど彼女を病院まで送ってくれたタクシー運転手だった。

島宮奈々未は首を振って言った。「違うわ。丹羽光世はそんな顔じゃないから」

しかし安島若菜は信じようとせず、足早に入口へ向かうと、その男性を引き止めた。

「あの、丹羽光世さんですか?」安島若菜は探るように尋ねた。

男性は困惑した表情を浮かべ、首を振った。「お嬢さん、人違いですよ」

そう言うと、彼は安島若菜をかわし...

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